月曜深夜の良心「続夏目友人帳」今回は40年の時を越えた物語。

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今回のトップ絵。滋さんが初めて出逢ったレイコさん。いつもと違う作画のタッチが独特な雰囲気を与えています。


タイトルからしていつもとは違うと感じさせる今回。その導入部もニャンコ先生がレイコの夢を視るという意外なシーンから

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あなた、私と勝負しない?負けたら、私の子分になるのよ――何故?決まってるじゃない、暇つぶしよ

先生も昔、レイコさんに勝負を挑まれた事があるのでしょうか?でも斑の名前は友人帳にはない。2人の間にどんな因縁が?

その春眠は夏目の落としたハッサクで破られます。謝る夏目に文句を言っていると、どこからか斧が飛んできます――斧!?
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夏目は寸前、斧を投げる何者かを見ていました。あれは、妖?

翌日、学校帰りに夏目は仕事帰りの滋さんと逢い、そのまま一緒に帰る事にします。滋さん、肩に背負っているのは製図などを丸めて入れる筒。身なりがきちんとしているようでいて無精髭を生やしたアンバランスな外見といい、自分で事務所を構える建築デザイナーのような職業のようで。

2人並んで歩いていると、道に妙な足跡が。裸足の人間に見えるが、指が6本ある。足跡は藤原家まで続いていて、家の前には大きな落書き。滋さんにも落書きだけは見えるらしい。
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しかも「ん?この絵…以前にも見たような
昨日の妖の仕業?
不思議な事は続き、今度は塔子さんの育てていた家庭菜園が踏み荒らされる。
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この妖、自分的にぶっ殺し確定
先生の言うにはこの種の悪戯をする妖は行為をエスカレートしていくという。その夜、寝顔を妖に覗き込まれ、慌てて追いかける夏目。
早く追い出さないと、塔子さんたちが!
夏目の中では塔子さん>滋さんなのね。

しかし妖の姿を見失い、足音に目を覚ました滋さんと鉢合わせ。滋さんは先刻の落書きからの連想か、自分が子供の頃もこんな事があったと述懐します。そう言えばこの作品、ポルターガイストみたいな既存のオカルト用語って使わないですね。
その時は近所に住んでいた不思議な女性が家に遊びに来た日から収まった、と滋さん。夏目は直感します。レイコさんだ。

翌日夏目は滋さんにその女性の話を聞こうとします。が、子供の頃の話で顔も名前も覚えていないと言う。落胆する夏目に滋さんは嬉しそうに
珍しいね、君がそんな話に興味を持つなんて。踏み込んじゃいけないと思ってるのかい?居候の身で家族の事に踏み込んじゃいけないと――踏み込んでいいんだよ。ここはもう、君の家なんだから
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「君は私の家族だ」ではなく、「君の家だ」という言い方、好きです。相手にここにいる事を権利として譲渡する言い方。

ともあれ、滋さんの昔語りが始まります。

まだ小学校低学年だった滋さんは、木に引っかかったボールを取ろうとしている時に初めてレイコに逢います。目の前でレイコさんが彼女と同じ位の男子に侮辱されるのを見て、子供らしい正義感から怒りを発する滋。赤の他人の名誉のために怒るその姿に、レイコは面白そうに言います。
まるで人間じゃないみたい
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本質的に人間を嫌っているレイコにとって、最大級の賛辞なのでしょう。そして滋さんの、恐らくは今でも気づかないままの初恋の始まりでもあります。

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それ以来滋はいつも独りでいるレイコに話しかけるようになります。レイコも決して嫌がってはいない。レイコと滋の奇妙な交友が始まります。

その頃から家に奇妙な事が。物音がしたり、家族が病気や怪我をしたり。周りからは呪いだと言われるようになります。
みんなそう言うけど嘘っぱちだ!呪いなんてあるわけない!

説明はないですが、レイコの前で滋が強がったのは、呪いがレイコと滋が遊んでいる事と結びつけて言われていたせいではないでしょうか。だからレイコの前で呪いを認めるわけにはいかなかったのでは。レイコは何を感じたのか。

レイコが家を見たいというので、両親がいない時を見計らって家に招きます。
優しい家ね。こんな所に住めたら、きっと幸せね――こんな家が荒らされるのは――不愉快だわ
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麦茶を入れて滋が戻ってくると、レイコの姿がない。2階からの物音に階段を上ると、爆発のような閃光と突風が。破壊された部屋の真ん中で、レイコが寂しげに笑いながら「ごめんね」と謝るのでした。


話を聞いた先生の「そうか、この家には、レイコも来た事があったか」という妙に納得したような言い方が印象的。夏目を受け入れた優しさなら、レイコを受け入れても不思議はないと言う感じです。その時、またあの妖が!
もしレイコが祓った妖が戻ったなら、塔子が病気になり、滋は怪我をするぞ

夏目、そいつを殺せ
心の中で命じるまでもなく夏目が追跡、しかし逆に待ち伏せされて喰われかけます。
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夏目の中に妖の中のレイコの記憶が流れ込む。

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さあ、出て行きなさい。荒らす事は許さない。ここは私の――お気に入りの子の家なんだから

間一髪、ニャンコ先生に助けられる夏目。先生は妖がカリメという名であり、家を気に入ると家人を追い出して住む妖らしい。夏目をレイコと間違えて復讐に来ているそうです。しかし夏目もレイコの記憶から対抗策を手に入れている。今度は俺が守る。レイコさんじゃなく、俺がこの家を守る。

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既に塔子さんの身には変調が。死刑確定

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レイコさんは亡くなった。この家も渡すわけにはいかない。これ以上この家の人達を苦しめるなら、出て行ってもらう!

大爆発の中カリメを退ける事に成功した夏目。守れた。
でもね、レイコさん。そういう時は『私の友達の家』て、言うものだよ

レイコの声優さんの芝居として、「私の」と「お気に入りの子」の間に半拍ほどのためがあります。レイコはもしかしたら本当に滋の存在をどう言葉にすればいいか判らなかったのかもしれません。それで半瞬の間の後、こんな回りくどい言葉を選んだのではないでしょうか。

騒ぎを聞きつけ2階に上がってきた滋にどう言い繕おうかと考える夏目。その瞬間、どう言い繕ってもそれは滋に対して嘘を吐く事になると気づきます。
だからレイコさんは会わなくなったのか。独りに戻ったのか

しかし、滋はそれ以上何も訊かず、弁償する必要もないと伝えます。ここは君の家なのだからと。夏目はただ、感謝します。
俺は、返せるだろうか。この喜びをどうやって返していけるだろうか。この、大切な人達に


作画のタッチがいつもと違うため、独特な雰囲気を持っています。塔子さんの慈愛が描かれる事の多い作品ですが、滋さんもまた素晴しい人物であるとこの一話のみで納得させる力があります。現実には夫婦とも嫌な奴はいても夫婦とも善い人って少ないですけどね。

次回は1期最終回の伏線が明らかに。
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